【Dendrobium pierardii】デンドロビウム ピエラルディ
当サイトでは、「癒し工房 苔玉」での栽培、育成経験に基づいた内容を記載しています。
本で紹介されている内容とは違う場合があります。
ご了承ください。
Dendrobium pierardii
デンドロビウム ピエラルディ(ピィラルディ)
Dendrobium aphyllum
デンドロビウム アフィルム(アフィラム)
【呼び方について】
・ピィラルディ
・ピエラルディ
・アフィラム
・アフィルム
様々な呼び方で呼ばれています。
ここでは「ピエラルディ」を使いながら、場合によっては「アフィルム」を使うように
します。
植物の場合、属性の〇〇属、〇〇科など時間の経過、研究の進み具合と共に変わることもありますので時代の変化に合わせて表記したいと考えています。
【着生蘭】
原地では着生蘭として自然の木の上などに着生しています。
温暖地では、立木に着生させて観賞しているようです。
国内では、立木への着生は気温の関係で難しいため、冬場は室内管理となります。
着生する性質を利用して鉢植えだけでなく「流木、板、コルク」などに付けられたものが
あります。
又、土を用いない栽培が可能な為「空中庭園」「空中ガーデン」として部屋に吊るしたり、
ベランダに吊るしたりして観賞します。
【特徴】
春先、バルブ(茎)が成長と共に垂れ下がり充実し、葉が茂ります。
冬には葉の色が変わり落葉して年を越し、春先に花芽が付き、やがて蕾が膨らみ
開花します。
落葉後の開花となるので満開の時にはビッシリと咲いた花に「ついうっとり」と見とれて
しまいます。
そして、つい触れたくなってしまうような花です。
優しいピンクに彩られた花姿は見た人に感動を与えること間違いありません。
【下垂性】
春先暖かくなった頃、新芽(翌年花が咲くバルブ(茎))が現れ、成長して行きます。
最初は上向きに成長して行くのですが成長するに連れ少しずつ垂れ下がってきます。
成長した長いバルブ(茎)は長いもので長さ60㎝~70㎝ほどになります。
バルブ(茎)が垂れながら成長する姿は独特で見て楽しめます。
成育環境によって差はあるものの、一年間しっかり管理できていれば
数本のバルブ(茎)の成長が期待できます。
【水やり管理の基本】
植物の水やりの基本は「乾いたらあげる」です。
この「乾いた」という状態は育成する環境によって全く変わってきます。
日当たりが良い場所、風通しの良い場所だと早く乾きますし、逆に
日当たりが悪く、風通しの少ない場合では乾くのに時間が掛かります。
ご自宅の環境で乾いたと思ったらあげてください。
また季節によっても乾く速さは変わります。
春先から夏場にかけては、乾きやすい状態になりますし、
秋先から冬にかけては、乾きにくい状態になります。
特に梅雨時期は湿度が高いため、乾くのに時間を要します。
季節による乾き方の違いと、ご自宅の環境による乾き方の違いが複合的に作用しますので
ご自宅の環境に合わせて水やり管理をしてください。
植物が「喉が渇いたぁ」という状態で水をあげるのがベストです。
まだ「喉が渇いてない」(湿っている)のに水をあげるのは良くありません。
花が好きで好きでたまらない人に多い失敗が、可愛がり過ぎて毎日、毎日水をあげてしまうことです。
まだ乾いていないのに水をあげてしまい更に次の日も次の日もと繰り返すパターンです。
その結果根腐れを起こして枯れてしまうという悲しい結果になりかねません。
ご自宅の環境を理解することと、ピェラルディの観察が必要になります。
【バケツジャブン】
板付けなど小型作品の場合、深めのバケツに水を汲んで頂き、苔玉の部分を水に浸します。
プくプクと泡(気泡)が出てきます。この泡(気泡)が出なくなるまで10秒~15秒程度、
水に浸します。
この方法が最適な水のあげ方です。
成長期に肥料(ティーパック入り)をあげている場合もそのまま浸けてください。
休眠期も同じ方法です。
【大型作品などバケツに入らない場合】
流木付けなど大型の作品に関しては、シャワーで水をあげます。
一度で終わるのでなく、数回に分けて水をあげるとしっかり浸み込みます。
【成長期の水やり管理】
4月~9月「乾いたらあげる」
ご自分の育成環境に左右されますが、「乾いたと思ったらあげてください」
昨日あげたから大丈夫ではなく、乾いたと思ったらあげてください。
乾きの早い環境で管理している場合は、朝あげたのに夕方には乾いている場合があります。
成長期ということを踏まえしっかりと水やり管理することが成育の基本になります。
この時期しっかりバルブ(茎)を育てる事が翌年の立派な花への布石です。
【休眠期の水やり管理】
10月~3月「乾かしてからあげる」
季節も変わりどちらかというと乾きにくい環境へと変化します。
成長期と違い「しっかり乾いた」ということを確認してから水をあげてください。
この時期、可愛がり過ぎて毎日水をあげてしまうと悲しい結果になりかねません。
また冬場は完全に水を断つ育成方法もあるようですが、「癒し工房 苔玉」では、
休眠期(冬場)でも乾いたら水をあげています。
特に、花芽が上がって来た段階でバルブがシワシワになるまで乾燥させてしまうと
翌年の花芽が飛ぶ場合があるのでご注意ください。
この時期は「乾かしてからあげる」です。
【苔玉の乾いたサイン】
乾いたかどうかを確認するには苔玉は触ってみると解ります。
「しっとり感」がなくなり「カチカチ」した感じになります。
さらに持ち上げると軽く感じます。
「カチカチ」「軽い」が渇いたサインです。しっかり水をあげましょう。
【鉢植えの乾いたサイン】
鉢植えの場合は、株の根本を触って確認します。
植え込み材料が渇いていたら「乾いたのサイン」です。
しかし、株の大きさに合わせた鉢の大きさでないとなかなか乾きません。
表面が乾いていても「鉢の底はまだ湿っている」ということがあります。
ついつい大きくしたいという気持ちから、株のサイズよりも大きすぎる鉢に植えてしまい
植え込み材がなかなか乾かないまま育成すると根腐れを起こしかねません。
株と鉢の大きさは、ベストマッチが理想です。
株の成長と共に鉢を大きくしていくことをお勧めします。
【肥料について】
施肥の時期は、4月から7月まで。
8月以降は切ります。
8月以降に肥料を与え続けると、葉、バルブが成長し花芽が付かなくなる場合があります。
置き肥は「ロングトータル花き1号100日タイプ」を使っています(2024年2月現在)
※液肥を与える場合は「ハイポネックス洋らん用」(窒素6:リン酸6:カリ6)を
1000倍に薄めて7日~10に一度水やりの代わりとして与えます。※与えすぎには要注意
【成長期・休眠期】
成長期は、暖かくなった3月下旬から9月下旬くらいまで。(地域によって異なります)
秋の気温が下がる頃から翌年の春まで休眠期とされています。
【低温処理】
花芽を付けるために、一定の温度(低温)にあてる必要があります。
晩秋から初冬にかけて寒くなったからといって暖かい室内に早い時期から入れてしまうと
翌年の春に花が付かないことがあります。
宮崎県では11月の寒くなったころにこの「低温処理」をします。
寒いなぁと感じる14℃~8℃程度に2~3週間あてます。
タイミングとしては、「霜注意報」が出たら室内の明るいところへ移動させます。
それまで、「寒さ」にあてることが基本です。
【落葉】
落葉して花が付くタイプとあまり落葉せずに花が付く種類があるようですが
寒い時期になると無加温では、葉が黄色く変色してほぼ落葉します。
少し葉が残るタイプもあれば、完全に落葉してしまってバルブだけになる個体もあります。
葉が落ち始めると「枯れた?」と心配になりますが、自然な変化です。
バルブだけになると少し寂しい感じにはなりますが、この時期が一番変化するピエラルディです。
ツヤツヤしていた葉が変色、落葉し、バルブだけになり、節目に花芽が少しずつ確認できるようになり、やがて膨らんできます。
【蕾】
バルブの節目から花芽が出始め、少しずつ膨らんできます。
開花前になるとぷっくりと膨れてピーナツ状になります。
【花・開花期間】
宮崎県では5月下旬が開花時期です。※無加温の場合。
リップは白。淡いピンク色の花が沢山付くのが特徴です。
落葉後の開花となるので、花が際立ちます。
沢山開花した花を見ると癒されること間違いナシ。
開花期間は2~3週間程度です。
【観葉植物としての魅力】
花が終わると、新芽(来年花の咲くバルブ)がグングン成長してきます。
4年目ともなるとバルブは60cm~70cm程になります。
成長したバルブから淡い緑色の葉が成長します。
少しずつ葉が色合いを増してきます。
緑色を見ると癒されるとか・・・
ツヤツヤとしした葉は観葉植物としての価値があります。
【古いバルブの処理】
11月頃今年咲いたバルブが乾燥したら切り落とします。
花が咲き終わった時期に切るのではなく、バルブの栄養分が新芽の方に行き渡った時期に
切り落とすのがベストです。
完全にか細くなり乾燥してきたら切り落とします。
【高芽】
管理環境によっては、本来花芽が開花する所から、高芽が出る場合があります。
高芽が出る要因は、いろいろ考えられますが
1.日光不足
2.肥料過多
3.水の与えすぎ
4.晩秋に早く室内に取り込んでしまう
などが考えられます。
不足しすぎたり、与えすぎたりした場合、生存の危機を感じて花を咲かすのではなく
子孫を残す方へつまり、生存保持しようとする能力と体力を子孫を残す方へと
変化させるのかも知れません。
花が咲かずに高芽になったからと言って落ち込まずに、高芽を育成してください。
たくさんのピエラルディの苗が出来ます。
【苔玉】
高芽を育成して3年目のものを苔に巻いたものです。
巻き立ては糸が見えたり、苔の薄い部分が気になったりしますが、2~3か月で
苔も落ち着き糸も目立たなくなります。苔の薄い部分は苔の成長と共に
目立たなくなります。
モスグリーン(苔の緑色)が精神を安定させるとも言われています。
【板付け】
苔玉に仕上げたものを板にアルミ線で固定しています。
板の演出を背景に成長していくピエラルディをお楽しみください。
苔玉単体より板付けの方が水やり管理をしやすいようです。
板に根が張りついて伸びて行く姿も躍動感があって面白いです。
【流木板付け】
流木+板付けを背景にしたものです。
同じくアルミ線で固定しています。
板と流木の演出をお楽しみください。
【流木付け】
苔玉に仕上げたものを、選抜した流木にアルミ線で固定したものです。
流木の形は一つとして同じものはなく、まさしく世界に一つだけの作品となります。
流木に付けて約1年もするとピエラルディの根が張り出し、感じの良い風情を演出します。
※海で採取した流木は塩抜き、アク抜きを済ませたものを作品作りに使用しています。
【ステンメッシュ付け】
根の躍動感をしっかりと観察できるようステンメッシュを採用しました。(2024年新作)
メッシュの表の部分苔玉をアルミ線で付け、アレンジとしてチランジアを付けたり、又
発展形として流木をあしらった作品です。
【鉢植え】
鉢植えの用土はベラボン(ヤシガラを粉砕したもの)を使っています。
水苔が主流だったものベラボン(アク抜きしたもの)に変え、水持ち、水はけが良いことを
確認して育成しています。
鉢植えの場合は、株が大きく成長する可能性を秘めています(実証済み)
【病気】
2024年の段階でウィルス性の病気、他経験がありません。
また農薬も使用しておりません。
注意として苔玉の部分、株の部分は地面には着けない方が理想です。
(土に含まれるウィルスまた細菌などに侵されるのを防ぐため)
ぶら下げて空中庭園を楽しみましょう。
【葉焼け】
夏場の直射日光に長時間あてると葉が焼けることがあります。
日照時間が短い場合は葉焼けせずに成長する場合もあります。
ご自宅の環境に合わせて育成してみましょう。
【遮光ネット】
癒し工房 苔玉では、遮光ネットを利用して育成、栽培しています。
宮崎県では夏場の日差しが強いことから使い分けて管理しています。
12月~3月までは日差しが柔らかいので遮光していません。
4月、5月、6月までは遮光率30%
7月、8月、9月までは遮光率50%
を利用しています。
【成長の秘訣】
成長期である5月~9月は自然の雨に当てると成長に差が出るようです。
雨が空気中の窒素分を含んでいる為か植物にとって好ましい環境なのかも知れません。
ビニールを撤去し自然の雨に合わせて育成しています。
とはいえ自然環境は人が計り知れない部分があります。
ご自宅で管理される場合一週間以上雨が降り続く場合には軒下などで管理した方が
理想です。
【春の管理の注意点】
・水やり管理。
・施肥スタート4月~7月まで(8月以降は切ります)
・日光によくあてる。
【夏の管理の注意点】
・水やり管理
・施肥ストップ7月末まで。
【秋の管理の注意点】
・低温処理。(14℃~8℃2~3週間)
【冬の管理の注意点】
・水やり管理
・バルブがシワシワになる程乾燥させない。
【冬場の適温】
・冬場は10℃が適温とされていますが、5℃程度までは育成できるようです。(実証済)
・霜にあてると弱ります注意してください。
監修 「癒し工房 苔玉」
くるから村/癒し工房 苔玉販売所