こんな職人います!

【ミニチュア職人】自然をミニチュアにする存在。

ミニチュア職人
昭和38年(1963)生まれ福岡県在住。

ミニチュア製作のきっかけ

小さい時から自然が大好き。山も好き、川も好き、植物も大好き。
その自然から生命を感じるような小さなものを、自分の手元に置きたかったという気持ちがミニチュア製作のきっかけ。
手掛け始めてから約10年になるという。

ミニチュア製作の大変なところ

小さなものに穴を開けたり、小さなものを接着剤で付けたりする時に目の焦点がなかなか合わずに苦労する。
また、接合部はピンポイントで付けないと汚くなったりするので、一発でパチッと付けられる腕をいつまでも持っていたい。
年齢と共に視力の低下を補うことが大変だが、それを糧にしてやっていきたいという。
いわゆる老化現象として現れる”老眼”だ。彼は分厚い老眼鏡使い、小さなものを指先でつまみ器用に扱い可愛らしいキャラクターを生み出す。

植物を題材

植物を見ていると生命力を感じる。
木の実、花、ドライフラワーなどを利用して、自然観をミニチュアの中に取り入れることがテーマだという。
作品に命を吹き込むというより、「命を吹き込まれている」と言った方がしっくり来るという。
木の実も花もそれぞれ大きさも違う。形も違うし固さとか柔らかさ質感も違う。
そのバラバラの質感のものを組み合わせ、キャラクターを製作し、ジオラマを製作している。
自然のものを題材にしていると、こんな感じで作ってネという感じが伝わってくる気がすると言う。
自分のイメージを持ちつつも、採取した植物に語り掛け、作品にしていく。
彼の手にかかれば、ドングリも人格を持つまでになる。

本の製作

自然を題材にして、キャラクター、ジオラマを製作して写真を撮り、そこに物語を添えて形にしたい。
自分一人の力では難しいので、作家/はちみつ職人に物語を創作してもらい本にしたい。
その先駆けとして、二人でくるから村の職人さん達と実際に会い、それぞれの工房に出向き取材を済ませた。
それぞれが独特の世界感を持ち、作品を作り出している現場に触れ、イメージを膨らませて感動的な本を作りたいと言う。

作品

彼の手から生み出されるキャラクターは可愛らしい。そして何か訴えかけるものを持っている。
独自の自然観が生み出す作品。小さい頃から自然が大好きで森の中で植物に語りかけ、花に話しかけ、自然と親しんできたからこそ生まれる作品。
試作品を見せて頂いたが、なんとも可愛らしい。そしてユーモアがある。くるから村の職人さん達も同様に「かわいい」と口にした。
中でも、中学生の女の子が「かわいい、玄関に置きたい」と口にした時、松井さんは満面の笑み。
子供心を今でも持ち続けているからこそこなせる業なのだ。
そんな松井さんが手がける本がどんな仕上がりになるのか今後が楽しみである。

捜索隊

小さい頃父親の同窓会があるということで父親の実家(祖父宅)を訪問。

「そのへんで遊んどきなさい」と言われ、山を見て、川を見てどんどん歩ているうちに山道に差し掛かったらしい。
その山道の隣には小さな小川。川の生き物を眺めていたら更に山の奥に入っていったらしい。
気づくと遠くから木を切る音。その音を頼りに更に山の奥へと入って行くと木こりさんが作業をしていた。
近づいていくと「お前どこから来たんだ?」と声をかけられ、事情を話すとその怖い顔をした木こりのおじさんは自然の話をたくさんしてくれたそうだ。
その内容が感動的で時間が過ぎることも忘れて聞き入ってしまったらしい。やがてそのおじさんは作業を終えて山を下りて行ってしまった。
松井少年もそろそろ帰ろうと川づたいに山を下りて行くと、なにやら下流の方がザワついていた。

「おったぞー」と声が響く。

地域の消防団とか村の人達の捜索隊が松井少年のことを捜索していたのだ。
すると向こうから父親が走って来て何も言わずに頬を「パチン」とビンタした。
それ以後父親はそのことについては一言も触れなかったと話す。
今思い返すと「父親は僕に好きなことをさせてくれていたんだな」と言う。また、出すぎてはならない、出すぎると痛い思いをするぞという教訓を教えたのではないかと言う。
この歳になって父親に感謝する気持ちになる。
そして現在、行き過ぎはダメだと止めてくれるのは奥さんだけだと言う。
「嫁さんの手のひらで転がされていることを理解しつつも、嫁さんに感謝している」と言う。